ヤマハ株式会社 生産部

「設計品質を製品品質へ」常に責任を持ってヤマハ品質を作りこむ気概

当初、浜松地区で生産されていたヤマハネットワーク製品は、2010年から中国・蘇州工場に生産の拠点を移し、現在はほとんどのネットワーク製品が中国で生産されています。音響生産企画部で主に工程設計や製造設計に携わる刑部勝一と、2010年にAV製品を生産していた蘇州工場の現地責任者としてルーターの生産ライン立ち上げに携わった斉藤球紀が、生産部門の「ヤマハ品質」に対する取り組みと思いについて語ります。

新製品立ち上げと量産で異なる生産部門の役割

刑部勝一刑部勝一

刑部:生産部門の役割は、新製品立ち上げ時と量産時に分けて考える方が分かりやすいと思います。

新製品立ち上げ時には製品設計の次にあたる「工程設計」というプロセスから入ります。品質の良いものをいかに短期間でコストを下げて作るかという工程設計です。工程設計に基づいて製造設計を実施し、設計が固まると設備や治具の手配ができ、本生産へと進むことができます。「安く作る」ために並行して原価計算も行います。

生産から出荷についてはルーチンワークですが、基本的に営業部門から生産企画部に「これだけ売りたい」という数字が送られてきます。生産企画部では、できるかできないかを判断して、生産リクエストを作り、各工場に送ります。

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斉藤:生産計画は工場側で作ります。本社から「1万台、3月中に納品」というリクエストが来たら、そのためのモノと人と設備を揃え生産計画を作成します。「モノ」を揃えるとは言い換えると部材調達です。一つ一つの部品が揃えば、基板を組み立て、外装を組み立てて、完成したら検査し、出荷します。

刑部:工程設計のプロセスに入る前に、製品特性や生産に必要な技術を考慮して、工場選定、すなわち「どの工場で製造するか」の決定も生産企画部が行います。今、ネットワーク製品のほとんどは中国の工場で生産していますが、RTX5000とRTX3500については製造技術的にかなり難しい部分があるので、国内で生産したほうが良いという判断をしました。

「メイド・イン・チャイナ」ではなく「メイド・バイ・ヤマハ」

斉藤球紀斉藤球紀

刑部:幸いにも蘇州工場の生産立上げでは、関係者の事前課題抽出や対策が功を奏し、品質問題はほとんどありませんでした。唯一覚えているのが、部品の不具合でコネクターの接触不良があり、中国のサプライヤーまで飛んで事情を聞いたことです。

サプライヤーの問題だとしても、お客様から見たらヤマハの製品に使われている部品を含めて「ヤマハの品質」ですから、ヤマハとしてしっかり対処しなくてはいけません。上記の不具合以降、コネクター周りについては神経を使い、普通に検査すると問題ない部品でも過酷試験をきちんと工程内で行い、品質確認をするようになりました。

ヤマハの品質が高いと言われる理由の一つに、外観にAV製品と同じ品質基準を適用していることがあるかもしれません。AV製品は、外観に少しでも傷があるとクレームになります。それに比べるとネットワーク製品はあまり外観が見られる機会はありませんが、それでもAV製品並の品質基準にしています。

先程もお話したとおり、ほとんどの製品は中国・蘇州工場で生産していますが、基板の製造品質はAV製品よりも一段上の基準を適用しています。具体的な例の一つが、はんだボールの大きさや数で、ルーターには特別対応をしています。

日本と同じものを作るために何が必要かを考える

刑部勝一 斉藤球紀

斉藤:海外生産であっても、品質の点で国内に劣る事は許されません。工場運営では「品質を最重要判断基準にする」ということに軸足を置きました。生産に掛かるコストや時間は後から取り返せても、品質を落としてしまうことで失った信頼は取り返せないと考えたのです。

発生した問題を抑えることではなく、そもそも問題を発生させないためにはどうするかを皆が考えました。安全対策の観点では「危険予知」という言葉が出てきますが、品質管理でも危険予知・予防は必要であり、現地でもそう立ち振る舞いました。

立ち上げ時には、日本の工場と海外の工場の実力差は歴然としていました。日本には絶対的な経験がありますが、海外にはそれがありません。2010年の蘇州工場立ち上げ時に幸運だったのは、蘇州工場スタッフ・日本側支援者とも現実を理解し差を埋めるべく協業推進できたことでした。

蘇州工場には実直なスタッフが多く、実力差・経験差があることをきちんと認識した上で、埋めるためにはどうすれば良いかという視点で考え、積極的に意見を出してくれました。

開発部門も蘇州工場を頻繁に訪れて、現場と会話しながらどう立ち上げるかを考えてくれました。初めてのネットワーク機器の中国生産でしたから、日本側も人をかけました。それに対して工場も応えてくれ、良い方向へ進められたのだと思います。

刑部:工場に、「メーカーが考える品質」と「ものづくりの現場」の両方をきちんと理解している斉藤さんがいたから、うまく立ち上げられたのだと思います。当時、開発部門にいた私は、「こんな図面で製造ができるわけがないだろう」とよく叱られましたが、そう言ってもらえたのは品質をそれだけ考えてくれているからです。

普通は開発部門が図面を提出したら、そのまま部品のサプライヤーに丸投げされてしまいます。それでも日本では、図面を見たサプライヤーが自分たちで察して改善してくれますが、海外では図面に書いたことしかやってくれません。私たちにはそれが分かっていませんでしたが、斉藤さんは理解していました。

斉藤:日本と中国では環境も経験も違うので、それに対応できる図面や道具でなくては成り立たない、日本と同じ進め方では絶対に失敗するということは、刑部さん達に何度も言ったかもしれませんね。

私はAV事業部で1990年代からマレーシア工場やインドネシア工場との窓口業務を担当、2001年からはマレーシアに駐在しました。日本の工場と海外の工場が違うことは理屈抜きで理解していましたから、日本と同じものを作るには、そのための条件を図面や道具に落としこむことが必須だと思っていました。

「品質最優先」を揺るがせてはヤマハらしさがなくなる

刑部勝一 斉藤球紀斉藤:「製造におけるヤマハらしさ」は、「品質」では絶対に譲らないという考え方が起点です。工場は品質、納期、製造キャパ、コストなど、考えることが沢山あって優先度をつけなくてはいけませんが、最重要項目が品質だということは一貫して進めてきました。

「もしかしたら不良品が混じったかもしれない」と思えば、全部ラインを止めて点検します。費用対効果を考えれば割に合わないことかもしれませんが、それとこれは別の話です。品質の良さが信用につながり、それはお客様につながります。そこを揺るがせては、ヤマハらしさがなくなってしまいます。

刑部:では、ヤマハの「品質」とは何かというと、それは「壊れない」だけでもなく「外観の美しさ」だけでもないのだと思います。ヤマハのAV製品であれば機能、性能はもちろん、「風合い」や「質感」といった感性的なところまで含めて「品質」として論じられます。ルーターも同じヤマハの商品ですから、自然に、同じ基準で「品質」が語られます。海外の工場でも、「うちの工場はそういうものだから」と普通に実現しています。

蘇州工場はもともとAV製品の工場でしたから、生産ラインも3ヶ月前には生産リクエストが確定し、納品は「月」単位で決まるAV製品のルールで組まれていました。ところがルーターの場合「来月納品」は当然で、納期は日付で指定されます。蘇州工場にはその点についてもお客様に迷惑をかけないように対応していただきました。

開発部門、品質保証部と共に、お客様第一で製品品質の作り込みを

刑部:ヤマハは開発と工場の距離が近く、他のメーカーに比べると一体感があるので、新製品立ち上げの時から製品の作り込みまで考えられているのではないでしょうか。開発部門、品質保証部が提示した設計品質を、生産部門が生産工程を通して製品品質へと作り込み、責任を持ってお届けします。

斉藤:お客様からの要求の中でも、品質は最優先だと思います。パートナーやお客様とは、製品を売買するだけでなく、ビジネスを一緒に立ち上げていくパートナーとして、ご要望を出来る限り受け入れ、より良い品質の製品をお届けしたいと思います。

アスキーで掲載されているヤマハ株式会社 品質保証部のインタビューです。ヤマハとは違う視点で描かれたインタビューを是非ご覧ください。