ヤマハ株式会社 品質保証部

品質保証部にもお客様の声が届く仕組みづくりを目指す

ヤマハのネットワーク製品は、多くのお客様から「壊れない」「信頼できる」という声をいただいてきました。その評価を支える品質保証の取り組みと思いを、品質保証部の小池田恒行と犬塚昌志が語ります。

「最悪」の環境を想定して実施する信頼性試験

小池田恒行小池田恒行

小池田:品質保証部の業務は大きく分けて3つあります。開発部門が作成した試作ハードウェアの信頼性試験、製品のクレーム対策、そしてそれらを下支えするQMS(品質管理システム)の維持管理と改善です。

犬塚:試作ハードウェアの試験とは、製品がお客様のところで「安全に使えるか」を確認する試験で、開発中の試作品を何台かをピックアップして、社内で行います。

小池田:試験内容の一つ目は振動や温度変化に対して問題なく動作するかです。

犬塚:振動試験は、振動台の上に製品を載せて振動を与えます。梱包状態、製品単体で通電した状態、LANケーブル接続状態で通電した状態など、様々な状態で試験します。

工場などで使われる場合は常に微振動がある状態で動作することが求められます。試験時には、製品にとって「最悪」に近い環境を想定します。

箱に入れたままの試験は、輸送中の振動を考慮したものです。製品そのものだけではなく箱の印刷が擦れて読みづらくないか、箱の中の付属品がずれて製品に傷をつけないか、といったこともチェックします。落下試験も同様で、輸送中に強い衝撃を与えられても問題ないことを確認するために行います。

恒温槽を使った試験も、環境の多様性を想定したものです。飲食店の厨房のような高温になる場所もありますし、周囲に障害物を置かれる場合もあります。その中でも、簡単に壊れず、仮に壊れたとしても危険な破壊にならないよう想定して評価しています。

他には、電波と電気についての試験を行います。電波については、周囲の機器に影響を与える電波の発生や、他の機器からの電波による誤作動を確認します。電気については、静電気で誤動作や破壊がないかを確認します。

小池田:あとは電源周りの試験です。AC電源の瞬断や、電圧の揺れに対して問題がないかを確認します。また、雷で簡単に壊れないか、壊れても、火災が発生するような危険な壊れ方をしないかを確認します。

設計部門とぶつかるのは、どちらも「お客様第一」だから

犬塚昌志犬塚昌志

小池田:苦労することの一つは不具合の「再現」です。不具合といっても、常に起こっているわけではなく、週に1回、3年に1回、あるいは全く不定期に起こるような現象を、開発部門の手元で再現する必要があります。

そのためには現場でデータを取る必要がありますが、お客様も業務で運用しておられますから、業務時間内に「システムを止めて試験をさせてください」というわけにはいきません。「次の週末夜中の3時まで待ってください」と言われることはよくあります。それでもどうしても再現できなければ、開発部門と一緒に条件を想定して修正して、という作業になります。

犬塚:信頼性試験でも、同じような話はあります。試験中の個体によるちょっとした動作の違いを見つけ、勘を働かせることができるかどうかで試験結果が変わることがあります。この「勘」を働かせてくれるメンバーがいることが、ヤマハの品質保証部の強みです。

小池田:設計部門は、こちらからの指摘に対しても「これはそういう仕様だから」と説得しようとしますし、それに対して時には激しく意見を言い合うこともあります。それぞれの立場で「良い物をお客様に届けたい」という思いのぶつかり合いなのだと思います。

標準化と都度対応と「マージン」の考え方

小池田恒行 犬塚昌志

犬塚:電源が安定したり、素材が錆びにくくなったりと、楽になったこともありますが、今も昔も変わらず苦労していることもあります。例えば、コネクターはお客様が直接触る場所で、故障につながりやすい部分なので、昔から検査の大変さはあまり変わりません。

小池田:試験の方法は文書化を進め、統一化を図っています。昔は試験方法も手探りで治具も手作りでしたが、品質保証に関するグローバルスタンダードを学んだことで標準化が進みました。とはいえ、意外なところで意外なことが発生するのはこの仕事の宿命ですから、都度対応は必要になります。

一つ例をあげると、0℃以下の低温まで冷やした状態で電源が入るか、という試験があります。これは、寒冷地のお客様から寄せられた「持ち帰ってスイッチを入れたのに電源が入らない」というお問い合わせがきっかけで始まりました。通常、お客様がいらっしゃる場所の気温であれば問題なく動作しますが、この時は輸送中に冷え切ってしまったのです。

「動作環境温度は0℃以上の設計なので、そんな試験の必要はない」という考え方もあります。ただ、私たちとしては「持ち帰ってすぐに使いたいと考えられていたお客様が、すぐに使えなかったことは良くない」と考え、試験項目に追加したのです。

これはある種のマージンですが、こちらは従来の経験からここまでのマージンが欲しいと要望しても、設計としてはコストに跳ね返りますから、すぐに「はいそうですか」とは言えない部分もあります。逆に営業部門からは「もっと動作条件を緩くできますよね」と言われますが、あくまでも安全と信頼のための「マージン」ですから、そこは簡単に譲れません。

全体を見通し適切に対応するのが品質保証部門の役割

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犬塚:ヤマハの品質保証のベースになるのは「安心して長く使い続けられる」ということで、言い換えると、「壊れる時は安全に壊れる」ということでもあります。壊れた時にお客様やお客様の資産に危害を加えない、火や煙を吹かない、といったことです。試験では、壊れるまで恒温槽で動かし続けて壊れるタイミングを見極めたりもします。

小池田:故障や初期不良で戻ってきたものについては、全数確認して、原因を探ります。特定の製造月で多ければロット不良がないかを調べる、夏に多ければ雷発生頻度との関係性を見るなど、様々な角度から原因を明らかにして、お客様への対応や今後の改善を図ります。

RTX3000で使用していた一部の部品が原因で、半年に1回程度不確定な動きをする可能性があることが分かり、リコールを決めたことがあります。何件か原因不明のリブートが発生したことがきっかけで発覚したものです。ソフトウェア開発者がバグ出しをしたのですがどうしても原因が分からず、メモリーが勝手に書き換わっているとしか考えられませんでした。そこで部品メーカーまで調査したところ、部品の材料が原因でメモリーが書き換わっていたことが判明したのです。

開発者は、まずは自身の責任と考えて、一生懸命自分の担当部分を調べます。「チップが悪い」なんて自分からは言いません。全体を見て、本当の原因を探り、適切な対応を取るのが、私たちの役割です。

「どこで製造してもヤマハ品質」を目指す

小池田:海外工場もヤマハ基準で管理していますし、開発部門と品質保証部のメンバーが実際に工場に足を運んできちんと管理しています。

犬塚:「日本も中国も同じ品質」にすることが目標です。とはいえ、現場で製造に携わっている中国の方は言葉も文化も違いますから、暗黙知の中で仕事をしていただけるわけではありません。ヤマハの通信機器に対するこだわりを数値化して工場に伝えていくのが課題です。

外観であれば「この範囲に許容される傷の数と大きさ」を数字にして伝えなくてはいけません。日本の工場であれば全てを言葉にしなくても良かったですが、中国では曖昧さをなくす必要があります。

小池田:基準を分かりやすくするために、工場のラインに写真で掲示するような取り組みも進めています。

「お客様との距離の近さ」を大切にしたい

小池田恒行 犬塚昌志

小池田:初期のルーター開発に携わり、その後技術営業としてお客様に接していた自分としては、品質保証部に来たことでお客様の声が聞こえなくなってしまうことを一番恐れています。今でも、開発メンバーがお客様と直接やり取りする文化が続いていますが、同時に「あ・うん」の呼吸だけでは維持できないことも感じ始めています。今までの良い文化を途切れさせず、お客様の声が品質保証部にも届くような仕組み化と数値化を進めていきたいと思っています。

犬塚:お客様と開発部門がつながる仕組みとしてはメーリングリストやヤマハネットワークエンジニア会がありますが、社内的にはカスタマーサービスで受けたその日の問い合わせを「お客様問い合わせダイジェスト」として社内で共有し、皆がお客様の声を感じる仕組みづくりに取り組んでいます。

私も、以前は営業技術でお客様から直接電話やFAXを受け、お答えするという仕事をしていました。開発メンバーも、お客様に育てられたという思いで、距離が近いと感じていると思います。その思いを大切に、品質保証部でもお客様の声を丹念に拾って製品にフィードバックしていくことで、お客様第一に仕事を進めていきたいと考えています。

アスキーで掲載されているヤマハ株式会社 品質保証部のインタビューです。ヤマハとは違う視点で描かれたインタビューを是非ご覧ください。