DVDやビデオといった映像ソフトは最も身近なエンターテインメントとしてすっかり定着している。従来は価格が高いためにレンタルが主流だったが、DVD ソフトの登場以後、2000円から3000円といった手頃な価格のパッケージソフトも増え、いわゆるセル市場も広がってきた。株式会社ジャパンエースは、これらのDVDパッケージソフト、ビデオソフトの流通問屋として札幌から福岡まで全国に10の拠点を展開、レンタル店向けのソフトウエア販売を中心としたビジネスを展開している企業だ。
「ビデオレンタル市場はすでに成熟しており、現在はDVDパッケージソフトの販売が急速に成長しています。弊社でも現在はDVDのセルに力を入れています」と株式会社ジャパンエース 営業管理担当 係長の土井清文氏は説明する。
2002年10月に事業を停止した同業社のシステムを引継いだ為、両社のネットワークをひとつに統合する必要が出てきた。株式会社ジャパンエース システム部 課長の服部憲治氏は「まず2社の販売管理システムを接続し、一体のものとして利用できる環境を作る必要がありました」と語る。そこで第一段階として、京都と大阪の2つの本社をインターネットVPNで結んだ新しいネットワークを構築した。アクセスにはADSLを採用、ルーターはヤマハの「RT105e」を使用した。これが2002年11月のことである。それまで、拠点との接続にはフレームリレーを利用していたが「速度的には最大128kbpsまでしか出ませんので、パフォーマンスには不満がありました。これをADSLにしストレスのない環境を実現できたことは大きな向上でした」(服部氏)という。
しかし、高速化できたとはいうもののADSLではまだパフォーマンスが不十分だった。また、インターネットVPNでは信頼性や安定性について不安が残る。そこで、ジャパンエースでは統合直後から、より高速で信頼性、冗長性に優れたネットワークの実現に向けた検討に入った。
導入を担当した日本テレコム株式会社 営業統括本部 関西支社 京都支店の小野聡子氏は「以前からさまざまなご提案を行っていましたが、第一段階ではインターネットVPN「ODN-Biz」の導入を完了しました。そこで、第二段階としてはIP-VPNを導入し、パフォーマンスや冗長性を強化するという形でネットワーク導入を進めることになりました」という。
第二段階のネットワークの導入作業は2003年4月から始まり、5月からは実際に稼働し始めた(図)。IP-VPNには、日本テレコムが提供する「Solteria」を用い、本社をはじめ各拠点で使用するルーターにはヤマハの「RTX1000」を採用した。RTX1000は企業向けのブロードバンドやVPN用ルーターとして幅広く採用されている製品。多くの回線に対応しており、高速回線を利用したネットワークを効率よく実現するのに適している。
ヤマハルーターを採用した理由について、日本テレコム株式会社 営業統括本部 システムエンジニアリング第3部 関西統括グループの山之腰卓氏は以下のように説明する。「シングルベンダでSolteriaのイーサネット回線、128k(BRI)が接続可能であり、インターネットVPNも利用可能なことが重要でした。また、ジャパンエース様のご要望である冗長性を高めるために、SolteriaではBGP4による回線冗長化ができ、ルートごとのバックアップが可能なこと、VRRPによる機器冗長化が可能なことも考慮いたしました。これらの求めていたすべてのニーズに対応できるのがヤマハのRTX1000だったのです」という。すでにRT105eも導入されており、保守体制を整える上でも同じベンダの製品で構成したかった事もヤマハ製品を選んだ理由だという。
営業統括本部
システムエンジニアリング第3部
関西統括グループ
山之腰 卓 氏
営業統括本部
関西支社
京都支店
小野 聡子 氏
ジャパンエースの新しいネットワーク・インフラの特長は、IP-VPNとインターネットVPNの両方を利用している点だ。また、上記でも説明したように冗長性の確保も重視している。「IP-VPN『Solteria』とインターネットVPN『ODN-Biz』をどちらもアクティブで使いながら、IP- VPN側にトラブルがあればインターネットVPNに切り替えて接続を維持できます。また、回線の冗長化だけでなくRTX1000も二重化しているのでハードウエアのトラブルにも対応できます」と服部氏は語る。
このため、各拠点、特に京都本社、大阪本社などの重要拠点ではRTX1000の機能をフル動員して使っている。したがってその動作の検証は徹底的に行ったという。
「機能を単独で利用する場合についての動作は仕様書などで分かりますし、実績もあります。しかし、今回のジャパンエース様のネットワークでは複数の機能を同時に使っていますので、実際の使用状況に合わせた確認が欠かせませんでした」(山之腰氏)。この検証と機器のチューニングを重ねた結果、 2003年5月に第二段階のネットワークも無事に完成した。
稼働してから約1年たっての成果について、服部氏は「パフォーマンスは目に見えて向上しています。特に、京都本社、大阪本社と東京、札幌、厚木の主要拠点をIP-VPN化した効果は大きいです。また、運用管理の負担も大きく軽減できました」と語る。土井氏も「導入コストは、ほぼ1年で回収でき、十分な成果が上がっています」という。
ジャパンエースとしては、この導入の成果を踏まえてさらに次のステップについても検討している。「映像ソフト業界はメーカーが東京に集中しています。しかし当社は全国に拠点がある為、市外通話が大変多く、今後、IP電話化などによって一層のコスト削減を進めていくことを考えています」(土井氏)。服部氏は「弊社ではノーツを導入済みですが、遠隔地やモバイル環境でも自由にノーツを利用できる環境を実現し、日常業務を支援する機能をさらに強化したいと考えています」と語る。
ヤマハは、このような新たなニーズにも的確に応える製品で、これからも同社のビジネスのバックボーンを支える存在であり続けるだろう。
所在地
〒600-8357
京都市下京区猪熊通五条下ル柿本町594
TEL:0942-65-1155 FAX:0942-65-0674
事業内容
ビデオ、DVDパッケージソフトウエアの流通問屋。全国のレンタル店向けにソフトウエアや、レンタル店向けPOSシステム・備品・販促品などの販売を行っている。また、情報誌の発行やコンサルティングなども実施し、ビデオレンタル店のビジネスをトータルに支援している。
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