文部科学省の「教育の情報化ビジョン」(2011年)では、2020年度に向けた主要施策の1つとして、「子どもたち1人1台の情報端末による教育の本格展開」を掲げています。こうした中で通信インフラの重要性に注目した岡山県倉敷市では、早くから市内の学校や文教機関を結ぶ光ファイバー網の整備に力を注いできました。この充実したネットワーク環境を背景に、公立学校へのICT機器導入も積極的に進められ、2016年8月には倉敷市教育委員会によって、新たに無線LANアクセスポイントWLX202が300台導入されました。
機種の選定では、ヤマハを含む3社の製品を実際の学校内に設置してWi-Fi感度の検証を実施。その結果、ヤマハ製品は机上や黒板上、天井中央などさまざまに設置場所を変えても、つねに1台で端末台数40台以上の教室全体をカバーする高速通信を維持できることを証明しました。さらに、これら同時に接続されている端末すべての通信速度を均一に保てるため、端末によって“速い、遅い”が生じることのない、安定した利用環境を提供できるといった優位性も確認されました。また実際の授業を想定したケースでは、必要な教室にアクセスポイントを先生自身で手軽に持ち運び設置できる“可搬性の良さ”が高い評価を受け、ヤマハの導入が決定しました。
コンピューター室の更新を機に、3台のWLX202が配当された倉敷市立連島北小学校。同校は、有線LAN環境を整えていましたが、授業の度に児童一人ひとりの机にケーブルを引くのは難しく、またICT教育のツールとしてタブレットを推奨していることからも、無線LAN環境を導入しました。既に導入していた他社のアクセスポイントでは、1教室30人の児童をカバーすることができなかったため、早急な改善を望んでいましたが、そこに今回WLX202が新たに加わることで、すべての端末利用が、ほぼ完全に無線環境に移行。電波の感度も大幅にアップしたため、隣接する複数の教室を1台でカバーできるようになり、通信が切れるアクシデントも格段に減りました。
WLX202と同時にタブレットも導入し、両者の組み合わせでICT授業の質を大幅に向上させています。従来の有線接続のノートPCでは、先生は教壇を離れることができませんでした。しかし現在はタブレットを手に先生が自由に教室内を動き、児童一人ひとりと対話しながら、こまやかに指導できるようになりました。この成果に同校では、ICT教育における無線LAN環境の重要さを改めて実感したといいます。
倉敷市教育委員会では、今後の目標として「先生の指導用パソコンのタブレット化」を第一に掲げています。ここには「1人に1台のタブレット」という目標の達成に向け、まず対象を先生に絞った小規模のネットワークを構築してノウハウを蓄積していく狙いがあります。またパソコンをタブレットに変えることで、先生が教室内を自由に動きながら子ども一人ひとりと対話するといった、新しい授業の試みが可能になります。そうした指導力の向上という面でも、タブレットには大いに期待しているのです。また倉敷市はデジタルコンテンツ授業の整備も進んでいて、小学校の理科と算数、国語、そして中学校の主要5教科のデジタル教科書が、教育委員会のセンターサーバーから配信されています。これらをタブレットで利用できるようになれば、ICT授業の内容は一段と充実していくでしょう。そうした新しい授業の試みを活性化していくためにも、使いやすく信頼性の高いインフラは不可欠です。とりわけ現場の先生方にとって、接続が簡単で通信切れなどのトラブルに悩まされない無線LAN環境は、授業の質やモチベーションの維持に直結するといっても過言ではありません。今回ヤマハのWLX202を300台という規模で導入したのも、そうした先生の指導力向上や新たな試みを支援する、ICT環境整備の第一歩だと位置付けています。
所在地 岡山県倉敷市西中新田640
URL http://www.city.kurashiki.okayama.jp/edu/
(2016年11月17日掲載)
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