北九州・門司港の港湾物流を担う門司港運では、フレッツ・グループとヤマハルーターによる内線VoIP網を構築、約85%もの通信コストの削減を実現した。10拠点の内線番号管理にはヤマハ電話帳サーバー「RTV01」を採用。内線番号の一括管理を行うと共に、RTV01が収集する通話履歴や障害情報、統計情報などを活用して、VoIP網の運用の最適化を図った。
関門海峡を望む天然の良港で、全国6大港の1つである門司港の港湾運送業務全般を担う門司港運。同社は「港湾イノベーション」を合い言葉に、港湾物流の低コスト化や業務の迅速化に取り組んできた。
港湾物流は船内・埠頭での荷役、コンテナ受け渡し、輸出入通関、運送、倉庫保管などの各業務を連携させながら行われるため、迅速で確実な情報の伝達が欠かせない。そこで同社では門司港を軸に、下関、苅田などの10拠点をネットワークで結んで基幹系のデータをやり取りすると共に、内線電話網を構築・利用してきた。
「顧客からさらに信頼され、港湾運送業務を通して社会経済の発展に貢献するためには、迅速・的確な業務の徹底化が必要だと考え、この数年、情報システム全体の再構築を進めています。特に、インフラであるネットワークの高速化は必須だという認識から、ブロードバンドへと切り替えました」と門司港運代表取締役社長野畑昭彦氏は語る。
2004年11月に稼働した新ネットワークはNTT西日本のフレッツ・グループを利用。旧ネットワークのルーターにヤマハ製品を使ってきたこともあり、移行の容易性や信頼性の高さ、メンテナンスの容易性、ISDN回線を使ったバックアップが可能なことなどから、今回もRTX2000/RT300iとRTX1000といったヤマハルーターの製品群が採用された。
新ネットワークの構築を完了した同社の次の課題は、内線電話網の再構築だった。
「アナログ専用線を使った内線網であった上、回線数が少なく、すぐ話中になってしまう拠点がありました。しかもセンター経由の構成のため、拠点間の通話は経路が長くなるので、通話中にノイズが発生するという問題が顕在化していたのです。そこで、新ネットワークを活用した内線網の構築を考えました」と門司港運総務部部長前原利彦氏はその理由を話す。
野畑昭彦氏
前原利彦氏
こうした要件に対して、同社の情報システムの構築や保守を担当するNTTマーケティングアクト九州が提案したのがヤマハのVoIPゲートウエイ「RTV700」と電話帳サーバー「RTV01」による内線VoIP網だった。
「ヤマハ製品であれば、VoIPでの実績が豊富ですし、現在稼働中のネットワークを使い、VoIPゲートウエイも含めてトータルで安く内線VoIPを構築できると判断しました。
また、ヤマハのVoIPゲートウエイは多様なビジネスフォンに対応できます。さらに、同時に通話可能なチャネル数も容易に増やすことができるので回線の問題も解決。ランニングコストの削減にも大きく貢献します」とNTTマーケティングアクト九州北九州支店ソリューション営業部SE担当主査牧野誠氏は採用理由を語る。特に、NTTマーケティングアクト九州が注目したのがヤマハ電話帳サーバー「RTV01」だった。RTV01は全拠点の内線番号の一括管理を行う機器であり、通話履歴や障害情報などをGUI画面で一覧表示する機能も持っており、VoIP網の拡張や運用を行う上で、大きな力を発揮する。
この提案を受けて門司港運は、2005年9月、内線VoIP網の構築を決断。「話中で電話がつながらないという問題が解消されること、IP-PBXに更新するよりも、新規PBX、VoIPゲートウェイ、RTV01を組み合わせた方が初期費用も安く済むこと。
さらに、アナログ専用線に比べ通信費の大幅な削減が可能なことが明確になったので、内線VoIP網の構築に踏み切りました」と前原氏は述べる。
こうして、2005年11月に内線VoIP網がカットオーバー。システムが業務上止められないという状況の中、昼休みの1時間(計2日)という限られた時間で作業を完了させた。
全拠点の内線番号が統一された番号計画に一新され、より利便性は向上。
さらに、アナログ専用線の時より、音声品質も向上し、社員の評判も上々だという。
コストに関しても、アナログ専用線で月14万円かかっていた通信料の内約85%に相当する11万円を削減するなど、大きな成果を達成した。
牧野誠氏
VoIPの構築において、最も懸念されたのは、データ系と音声系を同じネットワークに流すことによる音声系への影響だった。
評価テストを何回も行い影響が出ないことは確認されたが、今後運用していく中でデータ量の増加などによって、運用の見直しが必要になる可能性もある。ただこうした場合も、RTV01であれば通話状態、エラーの発生状況などを詳細に把握することができるため、データ系による音声の圧迫状況などをチェックし、最適な運用計画を立てることが可能だ。
「RTV01の通話履歴を見ると、1日あたりの通話数は約600件、最も多い時には1時間に100件あまりの通話が行われています。これまでは、大まかな傾向を認識することさえ困難でしたが、RTV01によって、通話量を的確に把握することが可能になりました。今後は、RTV01が記録する情報をうまく活用することで、先を見据えた形でネットワークの増強などの提案を行っていくことができると思います」と牧野氏。
また、新たな拠点で内線通話を行いたいという場合や内線番号計画を変更したいという時に、RTV01を用いない構成であれば、設置されているVoIPゲートウエイの設定をすべて変えなければならず、コストがかかってしまう。しかし、この構成は、RTV01の設定のみ変更すれば良く、既設部分に手を付ける必要がないため、作業にかかるコストを減らすことができる。さらに、RTV01(ハントグループ機能を利用)で、1拠点での同時通話数を最大60チャネルまで拡張できる。これによって、回線の増強要求があった時にも柔軟に対応することが可能になる。
こうして、基幹ネットワークの整備を完了した門司港運では今後、外線IP電話の活用なども選択肢に入れている。
「データ系、音声系を含めた更改で、事業展開の軸となるインフラを整備することができました。今後は、新たな活用を考えつつ、より一層のコスト削減と業務の迅速化・効率化を図り、顧客企業の期待に応えていきたいと考えています」と野畑氏は今後の飛躍を見据えている。
所在地
〒801-0841
福岡県北九州市門司区西海岸1-1-11
URL http://www.mojikoun.co.jp/
事業内容
1942年12月、関門港における船舶荷役業務会社として設立。1950年には現社名に変更し、港湾運送事業全般に事業を拡大。その後、さらに通関・倉庫・貨物運送利用事業・船舶代理店まで業務の幅を広げ、門司港を軸にした港湾物流業務を行っている。
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