2003年の開館から15周年を迎える『北上市文化交流センター さくらホール(以下、さくらホール)」。大/中/小3つのホールを保有し、子どもの舞台芸術体験事業「KIDSART(キッザート)」やさくらホールオリジナルの盆踊り大会「盆ジュール」など、住民参加型の自主イベントを多数開催。岩手中部地域の文化交流センターとして住民に親しまれています。
開館当時、発売されたばかりのヤマハ製デジタルミキサーを導入するなど、設備の先進性を誇った『さくらホール』ですが、15年を経て音響システムの老朽化が進み、北上市では指定管理者である「一般財団法人 北上市文化創造」と検討を進めた結果、15周年を機に音響システムの改修を決定。
運営管理を受託する財団法人のアドバイスを得て北上市が選定したのは、デジタルオーディオネットワーク規格『Dante』※に対応したヤマハの音響機器とあわせ、重くて高価な従来の音声信号用ケーブルに代わりギガビットイーサネット/光ケーブル/Wi-Fiなどで各ホール間の音響機器をつなぐIPネットワーク構成とする提案でした。選定の理由は、機能面での優位性と、開館15年間で培われたヤマハ製品に対する絶対的信頼感だったといいます。
※Dante™:Audinate社が開発したネットワークオーディオ技術。
インテリジェントL2スイッチ「SWX2300シリーズ」や無線LANアクセスポイント「WLX202」、ギガアクセスVPNルーター「RTX1210」などで構成され、VLAN間通信で各ホールやスタジオをつなぐネットワーク化により、一般的なLANケーブルでマルチチャネルの音声デジタル通信が可能に。配線を変える事無く、希望の場所で自由に音が流せるようになり、運用管理の柔軟性が飛躍的に向上しました。
たとえば大ホールにお客様が入りきれないような演奏会では、簡単な設定変更で大ホールの音声を中ホールや小ホールに伝送することで、同時に複数のホールで臨場感あふれるLIVE鑑賞が可能に。また全館を使用する大型イベントでは、小ホールなどでおこなわれる歌やダンスの教室の音声を、ホール全館で放送して“お祭り感”を演出するといったことが、Danteの機能を利用することで簡単にできるようになりました。また、Wi-Fi接続のタブレットPCのアプリを使うことで簡単に遠隔調整できるようになり、これまで調整室とマイクの間を何度も往復して行っていたセッティングも、いちいち調整室に戻らず調整が可能になり、省人化が進む現場の作業効率化にも効果を発揮しています。
このほか、公演内容を直接デジタル録音したり、ホール間を光ケーブルでつないでデジタル音声を長距離伝送したり、これまでできなかったことを様々実現しています。
ここ『さくらホール』では文化活動に対する市の理解もあり、今回の改修もスムーズに実現できました。
今回の改修では、新しい音響システムの本稼働前に実際に機材を操作するスタッフ向け説明会を実施しましたが、「こんなに人数いたかな?!」と驚くほど参加が多く、新しい音響システムに対する興味・関心の高さを感じました。稼働後もスタッフの目の色が全然違ってイキイキと仕事をしている様子を見て、ヤマハ製品にしてよかったと思いました。
これからの『さくらホール』を支える若い世代を含め、スタッフが楽しく働ける環境を用意することで技術継承を進めつつ、地域のお客さまにより一層の感動をお届けしていきたいと思います。
北上市民及び岩手中部地区広域市町村圏の住民に対し、質の高い芸術の鑑賞・体験の機会の提供、住民自らの創造的な文化活動への支援などを推進し、心豊かな地域社会の形成に寄与することを目的に、2003年11月にオープン。地域の文化交流センターとして、大ホール、中ホール、小ホールのほか、FM放送も手掛けるサテライトスタジオや練習室、アトリエ、会議室などを備える。公益法人「一般財団法人北上市文化創造」を指定管理者として運営される。
ネットワーク化のメリットは、機器/ホール間接続の容易性/柔軟性だけではなく、運用管理の効率化ももたらします。ヤマハルーター製品に標準搭載の「LAN マップ」機能により、機器の接続状態や設定がWeb GUI上で直感的に確認することができ、運用のアシストにつながります。システム改修の工事中もすべての機器の接続状況をPC画面から確認ができたため、短期間で安定した本稼働へつなげることができました。
所在地 東京都中央区日本橋箱崎町41番12号 KDX箱崎ビル
URL http://www.yamaha-ss.co.jp/
(2019年6月28日掲載)
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