WISS 2018

安定したWi-Fi環境を提供、サスティナブルな運用を目指す

最大200人に上るワークショップ(WS)の参加者に、安定したインターネット環境を提供するために採用したのがヤマハの製品。
担当者が数年ごとに入れ替わる中でもサスティナブル(持続可能)な運用が可能だ。

「WISS」は、日本ソフトウェア科学会インタラクティブシステムとソフトウェア(ISS)研究会が毎年2泊3日の合宿形式で開催しているワークショップだ。一方通行の発表ではなく、講演と並行して様々な意見交換を行う場としてテキストチャット環境を用意し、参加者の積極的な議論や濃密な質疑応答を促してきた。
そのインフラとして、ハブでつないだだけの簡易的なLANが提供されてきたが、2009年頃から環境が徐々に変化した。スマートフォンやソーシャルネットワークの普及も相まって「いつでもどこでもネットワークにつながるのが当たり前」になってきたのだ。
ちょうどこの時期、研究者同士のつながりからWISSのネットワーク構築を手助けすることになった国士舘大学理工学部理工学科電子情報学系教授の中村嘉志氏によると、「せっかくだから、閉じたLANだけでなくインターネット接続も提供しようと考えた」。すると予想以上にヘビーに利用されたうえ、会場からの動画配信も始まり、「普通のオフィスのような環境を提供するインフラとしての役割が期待されるようになってしまった」という。

WISS

WSに求められるインフラ模索

通常の大学や企業のネットワークとは異なり、WISSのネットワークはワークショップの間だけ展開されるテンポラリなものだが、果たす役割は大きい。ネットワーク担当になった研究者らが5年ずつ入れ替わりながら手弁当で運用し、会期中の安定したネットワーク提供に向け試行錯誤してきた。
最初に直面したのがネットワークの輻輳だった。WISS参加者は最大200人だが1人1台のPCに加えて様々なデバイスも併用する。加えて、「多くの参加者がインストールしていた特定のアプリケーションが思いがけず定期的にブロードキャストをかける仕様だったため大きな輻輳が発生したし、セッション数も消費するためNATテーブルがいっぱいになってしまった」。
そこでまず、WISS参加者の多くがインターネット接続に利用できる「日常生活」と動画配信を分割して、用途毎に回線とセグメントを分けた。動画配信用にはRTX1200を用いて安定化を図った。さらにWISS 2012では、セグメントを複数に分割して適切な規模に収める考えからと、「キャッシュを活用してなるべく外部に迷惑をかけないようにしたい」という考えから、L3スイッチとプロキシサーバの機能が同時に果たせるソフトウェアルータ「VyOS」(当時はVyatta)を採用した。

サスティナブルな運用を目指して

これで安定した接続を提供できるようになったが、次に悩まされたのがトラブル対応だった。WISS 2014では学生アルバイトの作業ミスに加え、たまたま発覚したVyOSのバグに悩まされ、前日はほぼ徹夜。綱渡りでの運用になってしまった。定常運用の次の課題として、なるべく負荷を減らした「サスティナブル」な運用にしたいと考えた。
そこで、トラブルが発生した際に疑うべき個所を減らすため、ルーターをコア(VyOSの1台)とエッジ(RTX1200とRTX1210の2台)の構成にした。
この時期、もう1つの問題として無線アクセスポイントの性能にも悩まされていた。コンシューマー向けモデルでは接続が安定せず、設計通りの台数が接続できなくなるトラブルが発生していた。ヤマハ 研究開発統括部 第1研究開発部 サービスプラットフォームグループ 主事の原貴洋氏は「私がネットワーク担当になった時、無線LANに絶望し有線接続のみの運営に決まりかけたが、なんとか無線LAN提供にコダワリたかった」と振り返る。
問題解消に向けて検証したのがヤマハの「WLX302」だ。WISS 2016のクロージングでは参加者全員に呼び掛け、あえて想定以上の負荷をかけて問題なく接続できることを確認し、翌年から「WLX402」で無線LAN接続を提供することにした。
近年、SSL化が進み、キャッシュによって得られる効果が限定的になっていたことも考慮し、プロキシを持たないスイッチの採用を決断。2018年にはL3スイッチの「SWX3100-10G」を用いてセグメントを分割した。
「ソフトウェアルーターによるネットワーク構成の模索に目途がついたところで、ちょうど良い規模感のSWX3100-10Gが出てくれた」と、WISS 2014からネットワーク担当を担ってきた明星大学 情報学部情報学科准教授の丸山一貴氏は語る。

図表 WISS 2018のネットワーク構成

図表:WISS 2018のネットワーク構成

ネットワーク担当の負荷も軽減

試行錯誤を重ねてきた結果、WISSのネットワークはオールヤマハ、無線利用中心になったが、「来場者の約90%が問題なかったとアンケートに回答している」(原氏)という。
ネットワーク担当の負荷も下がった。コマンドラインではなくGUIで各種設定を行えるようになった上、無線LANアクセスポイントの設定もコピーだけで済む。コンパクトなアプライアンスで構築できることもメリットだ。VyOSを搭載したソフトウェアルータはタワー型サーバで稼動しており持ち運ぶのも一苦労だった。
WISSネットワーク担当には新たなメンバーが加わり、2019年に向けた検討を進めている。「今の構成を踏襲しつつさらにシンプルにし、またIPv6も導入したい」(原氏)。今後も、インタラクティブなシステムのあり方について活発に議論していく基盤として、コストパフォーマンスにすぐれ、安定したネットワークを提供するヤマハ製品に期待している。

導入企業様

WISS

WISS

正式名称
Workshop on Interactive Systems and Software
設立
1993年
導入の経緯と成果
毎年会場を変えつつ2泊3日の合宿形式で行われるワークショップで、最大200人の参加者が利用するインターネット接続環境を提供。数年おきに担当者が入れ替わる中、安定した接続環境を実現している。
システム概要
・ルータ「RTX1200/1210」
・スイッチ「SWX3100-10G/SWX2200-8PoE」
・無線LANアクセスポイント「WLX402」8台
Webサイト
WISS ヤマハ 研究開発統括部 第1研究開発部 サービスプラットフォームグループ 主事:原貴洋氏(左)
国士舘大学 理工学部理工学科 電子情報学系教授:中村嘉志氏(中央)
明星大学 情報学部 情報学科 准教授:丸山一貴氏(右)

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この記事は、株式会社リックテレコムの許可により「月刊テレコミュニケーション(2018年12月号)」の記事を転載したものです。
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(2018年12月26日掲載)


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