タイトル:IPoE高速化安定稼働への突破
投稿者:新井 信洋
受賞者コメント
このような素晴らしい賞をいただきとても嬉しいです。
トラブル対応時は、原因がわからず、試行錯誤の連続で、解決までとても長い時間がかかってしまいました。ただトラブル対応を通して、インターネットの技術的な理解、ヤマハルータの持つ機能の理解がより深まったと思います。あきらめなければ、不思議なことに何かしらの解決策が見えてくるものだと感じました。賞品のヤマハ製品で、いろいろな機能を試してみることを楽しみにしています。今後もスキルを磨きネツエンとしてより活躍できるようになりたいと思います。
お客様ニーズへの提案にあたっての意外性、既存の概念に囚われることなく、創意工夫しながらも実体験に基づく実現性がポイントになりました。また、導入後の問題解決に取り組む熱心さは審査員の注目を集めました。問題の根本的な原因を突き止める様子やヤマハネットワーク製品の性能と細部の機能まで追求熟知している様子が大きな評価点を獲得しました。まさにこの企画を通して広く知って頂きたい「ネツエン」の姿勢や人との関わりが感じられるエピソードでした。
WEBマーケティング会社のお客様から、WEB参照を高速化したいという相談を受けた。特に夕方以降に遅くなるとのことだった。
私は、自宅環境で高速化を実現できていたIPoE IPv6サービス導入を提案することにした。
従来のネット接続(PPPoE)では、NTT設備内にある網終端装置が、特に夜間に混雑して、ネットが遅くなる。IPoE IPv6では、IPv4 over IPv6通信をすることで、ボトルネックとなっている網終端装置を迂回してIPv4 Webサイトへアクセスできるので、高速化が図れる。
良い仕事ができたと満足していると数日後、お客様から思いもよらない連絡が入った。Web表示が極端に遅くなる現象が時々発生するというのだ。
陽気にスキップしていたら、いきなり落とし穴に落とされた気分だった。
調査は難航を極めたが、ネットワークエンジニアの名に懸けて、何が何でも解決しなくてはと心に決めていた。しばらくして、DS-Liteは、複数の契約者で、プロバイダ設備側にあるグローバルIPアドレス(以下GIPアドレス)を共有して使っていることがわかった。Web参照時、NATセッションが発生するが、複数の契約者でIPを共有しているため有限のNATセッションを分け合って使っていることになる。そのため混み合うとセッションの枯渇が起こって、不具合が生じているという仮説にたどり着いた。
この仮説を証明するための検証環境構築に、再びヤマハルータの力を借りることになった。お客様事務所と私の所属事務所に、それぞれRTX1200、RTX1210を設置。IPSecで拠点間接続する。
問題発生時に、一部のパソコン(パソコンA群)を、このIPSec経由でネット接続を経由するようにした。この通信では、NVR510のDS-Liteトンネルを経由しつつも、NATセッションは、PPPoE接続時RTX1210に割りあたったGIPアドレスに対して発生する。想定通りパソコンA群のWeb参照は、問題発生時も安定していたので、不具合現象は、プロバイダ網側でのNATセッション数の枯渇によるものだと確信した。
この問題を解決するためにはIPv6 IPoEを利用でき、かつNATセッション枯渇の問題が生じないというメカニズムを探り当てる必要があった。
解決方法をリサーチしていくと、IPv4 over IPv6の方式の1つであるMAP-Eでは、ルータ側にGIPアドレスが割りあたることがわかった。ただし、複数の契約者で、同じIPアドレスを共有することはDS-Liteと一緒で契約者ごとに使えるポート番号が制限される。ポート番号が制限されていることは、NATセッションが制限されていることと似た状況で万事休すかとあきらめかけた時に、ヤマハルータには「ポートセービング IPマスカレード」機能という起死回生のテクノロジーがあることを発見した!この機能により使用するポート番号数を節約しながら、NVR510のNATセッション数の上限である65,534まで利用できる。これなら、セッション数の枯渇は回避できる!
MAP-Eで利用可能なプロバイダへ変更し、NVR510をMAP-E対応のためファームウェアのアップデートをした。そしてMAP-E設定を実施したところ高速なWEB参照が可能となった。その後、不具合現象は発生しなくなった。ようやく長い迷路から抜け出しゴールにたどり着いたのだ。最終的に問題が解決するまでに、実に初期導入時から1年以上の月日が流れていた。
苦労した分、解決したときの喜びは格別だ。
今日も、ネットワークが繋がっている。
当たり前に思われがちなその日常を、見えないところで支え続けている人たちがいることを、私たちは沢山の人に知ってもらいたいと考えています。
そこで「ネットワークエンジニア」のエピソードを初めて募集することにしました。
若手からベテランまで、日本全国の熱い「エンジニア魂」が込められた笑いあり、涙あり…… 沢山のエピソード、お待ちしています!
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