使いやすく、そして、いい音を提供する音響ネットワーク

 菊地氏 高久氏

ヤマハサウンドシステム株式会社 マーケティング部 事業企画課
課長:菊地 智彦 氏 / 主任:高久 孝志 氏

ヤマハサウンドシステム株式会社は、劇場やホール、スタジアムなどの公共空間において最適な音響システムを提供する音響エンジニアリング会社で、プランニング・施工・調整・保守やそれらを構築するために必要な音響機器の開発・製造も行っています。
数多くの施工実績から蓄積したノウハウ、高い顧客満足から得られた信頼をもとに、先進技術を駆使し、使いやすく、高音質、高明瞭度、高信頼度の音響システムを実現します。早期より柔軟な運用を実現する音響システムのネットワーク化に取り組み、オーディオネットワークの構築をしています。

多くの感動を生む劇場やホール、スタジアムの音響システム

劇場やホールではさまざまな演目の演出を支援し、スタジアムでは観客席のすべてに明瞭なアナウンスや競技演出を支える音響システムは、施設ごとに作りこまれています。音響システムから生まれた音声は、数多くの人に感動を届けています。

トヨタスタジアム

ネットワーク化が加速する音響システム

音響システムは、昔、すべてがアナログでした。1980年代後半、音響システムにデジタル機器が導入されるようになりました。ヤマハがデジタルミキサーを発売したのもこの頃です。機器はデジタル化が進みましたが、それらを繋ぐケーブルはアナログでした。素材が高音質でも、伝送距離が長くなることで音質が劣化する問題がありました。その後、デジタル機器同士をデジタルで繋ぐようになり、今ではネットワーク化することが主流です。今は「空気振動を電気信号に変換するマイク」と「電気信号を空気振動に変換するスピーカー」だけがアナログで、それ以外はほぼデジタル処理といえます。
音響システムのネットワーク化のメリットの一つ目は、アナログ信号の長距離伝送による音質劣化が少なくなり、高音質が維持できます。二つ目は、伝送路を容易に二重化でき、障害対応力を高められます。三つ目は、配線変更が必要になるような構成変更が容易で、多様な演出要望にも柔軟に対応できるようになりました。また、タブレット端末から無線LANを通して、音響システムの遠隔操作や監視も可能で、操作性が格段に向上しています。

ホール・劇場の中規模な音響ネットワーク、スタジアムの大規模な音響ネットワーク

ホールや劇場では、舞台近くにマイク、客席や舞台には数十もスピーカーを配置しています。例えば、舞台近くの「舞台袖」、音響オペレーションを行う客席後方の「調整室」、「音響マシンルーム」の離れた3か所に設置された音響機器を光ネットワーク接続し、アナログ伝送部分を最小限にしています。
スタジアムは多いところでは数百というスピーカーで観客席に音声を届けます。ホールや劇場と同様にアナログ伝送が最小限になるように音響機器を配置し、長距離伝送が必要な部分に光ファイバーを使用します。

音響システム業界に求められるネットワーク人材

音響システムには、ネットワークが必須の時代になりました。ネットワークを上手に構築し、扱えるエンジニアが求められています。また、音響システム以外のシステムにおいてもネットワーク化が進んでおり、施設運営する方にとってもネットワークスキルが求められています。ITスキルをお持ちで、音楽や音響、エンターテインメントが好きという人は、この世界で歓迎されると思います。

バックヤード写真

既存の制約を乗り越え続ける音響ネットワーク

音響システムのネットワーク化により、長距離伝送による音質劣化、障害対応力の向上、多様な演出要望に応える柔軟な構成変更など多くの制約を乗り越えてきました。これからも、さらにネットワーク化が進むでしょう。また、ローカルネットワークから外に飛び出していくことによって、地理的な条件をも乗り越えて、あらゆる場所でエンターテインメントを楽しむことが可能になると思います。

(2020年10月30日 掲載)

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