「ネットワーク機器」部門で3連覇を成し遂げたのがヤマハだ。
ユーザーの声に真摯に耳を傾け、高信頼で使いやすい製品づくりに取り組んできたことがその原動力となった。同社では、LAN製品の拡充や統合管理機能の強化、クラウドとの連携など、より柔軟で安定したネットワークを目指す活動を全方位で展開。さらには、SD-WANや仮想ネットワークへの対応など、将来に向けた取り組みも着実に進めている。
楽器、音響機器の老舗メーカーとして、世界的にその名を知られるヤマハ。今回3連覇を達成したネットワーク機器に関しても、既に25年近くに及ぶ歴史を積み重ねている。
「放送やライブなどに使われる業務用音響機材には、極めて高いレベルの品質と信頼性が求められます。お客様のビジネスを支えるネットワーク機器にも、そこで培ってきたものづくりのDNAが連綿と受け継がれています」と、同社の中田 卓也氏は強調する。
今回の調査においても、「信頼性」「運用性」「コスト」などの項目で高い点数を獲得。「ネットワークを止めない」という同社の強い思いが、ユーザーからも評価される結果となった。中田氏はこの点について「安定的なネットワークを実現しようとすれば、機器の信頼性も必然的に向上します。また、お客様にとって使いやすい操作性を追求すると、コマンド体系やGUIもシンプルで分かりやすいものになります。こうして、長期間故障せず容易に運用できる機器をつくり上げてきたことが、コスト削減にも役立つとご評価いただけたのではないでしょうか」と分析する。
AIやIoTの活用が進む現在では、ネットワークに対しても次々と新しい要求が生まれている。多様化する顧客ニーズに応えていくためには、これまでにない発想でものづくりに取り組むことが必要だ。そこで同社は、2018年5月に、新研究開発拠点「イノベーションセンター」を開設した。
中田氏はその狙いを「各拠点に分散していた楽器、音響機器、ネットワーク機器の技術者を1カ所に集約することで、分野の異なる技術者同士の交流や斬新なアイデアの創出を促進します。また、自社だけですべての取り組みが完結できる時代ではありませんので、社外の方々との共創活動も積極的に推進し、今までにないイノベーションの実現につなげていきたい」と話す。
同社のネットワーク機器事業の大きな特徴として、「ユーザーの声に徹底的に耳を傾ける」という点が挙げられる。
「ビジネスを継続していく上では、お客様にご満足いただくことが絶対に必要です。特にネットワーク機器は、創生期からお客様と共に事業を育ててきた歴史がありますので、様々なご要望にしっかりとお応えしていきます」と中田氏は話す。
その姿勢は、製品ラインアップの拡充や機能強化からもうかがえる。例えば、幅広く安定したネットワークの実現に向けて、スイッチ「SWXシリーズ」や無線LANアクセスポイント「WLXシリーズ」のバリエーションを増強。ここでは同社初となるL3スイッチを新たに投入するなど、LAN製品のさらなる充実を望むユーザーの声に対応している。加えて、LAN見える化ツールとして人気の「LANマップ」機能の強化も進められている。
一方、複雑化するネットワーク環境の統合管理に関しては、クラウドベースの統合管理サービス「Yamaha Network Organizer(YNO)」を提供。これを利用することで、同社ネットワーク機器の監視・管理を、クラウドから一元的に行うことができる。
YNOの機能拡張も継続的に実施されており、現在では各機器のLANマップ画面をYNO上で表示する「GUI Forwarder」や、機器の現場設置作業を大幅に省力化・効率化する「ゼロタッチコンフィグレーション」などの機能を新たに搭載。こうした利便性の高さが評価され、大手通信キャリアでの採用も決まっているという。
「変化の激しい時代ですから、製品に求められる機能や仕様も次々に変わっていきます。そこで発売後の製品についても、可能な限り機能追加やソフトウエアのバージョンアップを実施し、お客様に末永く安心してご活用いただける環境を目指します」と中田氏は話す。
近年では、重要な業務システムをクラウドへ移行するケースも増えているため、外部クラウド事業者との協業も推進中だ。これまでもAmazon Web Servicesとの連携機能などを提供してきたが、同様の取り組みを他の主要クラウド事業者へも拡大。自社内/クラウドの別を問わず、シームレスにシステムを活用できる環境を整えていく。
以前はルーターメーカーというイメージもあった同社だが、LAN製品のラインアップも充実した現在では、ネットワーク機器の総合メーカーへと変貌を遂げつつある。最近話題のSD-WANについても、同社ならではの取り組みを展開中だ。
例えば欧米流のSD-WANでは、ホワイトボックススイッチを用いるのが一般的だが、実際の運用現場ではスイッチ側にある程度の機能がないと不便なケースも多い。そこで同社では、YNOの機能やクラウド事業者との協業も活用し、運用現場の業務実態に即した「ヤマハ流SD-WAN」の実現を目指している。これも「ユーザーにとって本当に必要なものは何か」を徹底的に追求する同社の姿勢の表れといえるだろう。
加えて、仮想ネットワークの実現に向けた将来構想も描いているという。これまでハードウエアで提供してきたルーター機能を仮想化することで、超高速ルーターの構築やクラウド間連携への活用、あるいは楽器/音響機器への搭載など、様々な新しい可能性が広がることになる。
「もちろん、こうした取り組みでも、ベースとなるのはあくまでもお客様のニーズですので、ぜひ多くのご意見を賜りたい。そこに応えていくことが、当社のネットワーク事業を成長させるカギだと考えています」と中田氏。今後のヤマハの展開が楽しみである。
「日経コンピュータ顧客満足度調査 2018-2019」ネットワーク機器部門において3年連続で第1位を受賞
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