「ネットワーク機器」部門で3年連続の首位を獲得したのがヤマハだ。コロナ禍でテレワークが普及する中、多くの企業でネットワーク機器へのニーズが増大している。同社は、環境の変化に先回りした対応で積極的な情報発信を行うとともに、製品の供給体制を確保。そして、新製品を投入することでパートナーを支援した。これらの取り組みが、「製品」「技術支援/情報提供」「納期対応」といった調査項目での高評価につながった。
コロナ禍に揺れた1年間、人々の働き方は大きく変わった。2020年春以降は一気にテレワークへの移行が加速。その後、事態が長期化の様相を呈するにつれ、テレワークとオフィスワークを併用するハイブリッド型のワークスタイルも広がりつつある。
働き方の変化は、企業のネットワーク環境に大きなインパクトをもたらした。例えば、在宅勤務者の通信量増大によってネットワーク帯域が逼迫するなど、既存のネットワーク環境では業務継続が困難になるケースが頻出。「つながらない」「仕事が進められない」といった課題が発生する中で、ネットワーク関連機器へのニーズは大きく高まっている。
「新しいワークスタイルに対応するため、多くのお客様がネットワークの見直しに取り組んでいます。社外と社内をつなぐVPN回線の帯域増強や、ネットワークを守るセキュリティ対策関連のお問い合わせが急増し、我々メーカーはそれにお応えしていく必要がありました」とヤマハの川上 聡氏は語る。
そこで同社は、顧客、パートナーの声に応えるべく多方面の取り組みを展開してきた。
まず取り組んだのが、製品供給体制の維持である。
「ヤマハのネットワーク製品は日本や中国などで製造していますが、新型コロナウイルスの感染の広がりに応じて、2020年1月から製造停止せざるを得ない製品が出てきました。その後、感染予防策などを講じ製造再開しましたが、部品サプライヤーの稼働も万全ではない状況で、製品供給を継続することは容易ではありませんでした」(川上氏)
この事態を打開するため、同社は海外工場、部品メーカー、開発部門、営業部門の密な連携に取り組んできたという。
「時には代替部品を手配して、製品の継続的な生産体制を整えました。もちろん、状況は時々刻々と変わるので、設計変更が無駄になったこともあります。それでも、様々な事態を想定して備えたことで、供給を大きく減らすことなく乗り切ることができました」と川上氏。時期により波はあったものの、2020年は前年同等の生産量を確保することができた。ただ、新型コロナウイルスは衰えず予断を許さない状況のため、引き続き動向を見ながら対応していくという。
言うまでもなく、製品の供給体制は、パートナーにとって顧客提案の成否を左右する重要なファクターだ。この点が、調査項目の「納期対応」の高評価に現れた結果となった。
もう1つ重要な取り組みが、顧客やパートナーとのやり取りを担う「テレワーク相談窓口」を開設したことである。最初の非常事態宣言が発出された翌日、2020年4月8日に立ち上げ、現在も運営を継続している。
「その名の通り、テレワーク環境で働く人を支援する特設サイトです。お客様に役立つ情報を提供するほか、各種お問い合わせに対応します」と川上氏は語る。ポイントは、「途切れない」「安全・快適」「音が漏れない」といった困り事を軸にコンテンツをまとめたところにある。従来は製品軸で情報を提供するケースが多かったという同社だが、コロナ禍を受け、サイト利用者に寄り添うスタイルへの転換を図った。
このページはパートナーへの情報提供サイトとしても機能している。テレワークで発生するユーザーの疑問や課題を理解し、提案の質の向上につなげることができるという。
「当社の営業担当者がパートナー様と話をする際も、テレワーク相談窓口で集めた情報を基に『最近はこういう困り事が多い』といった具体的な会話ができます。困難な状況下で、我々とパートナー様の連携強化にも一役買ってくれています」と川上氏は付け加える。
新たなニーズに応えるための製品開発にも取り組んできた。コロナ禍で重視される要件は大きく3つあるという。
1つ目は「安定性」。リアルタイム性・高負荷耐性に優れ、常に安定した通信を実現することが求められる。2つ目は分散型の働き方に対応した「セキュリティ」。そして3つ目はリモート環境でも通信状態が把握できる「管理性」である(図)。
テレワークの普及により、ネットワークのトラフィックが急増。安定性、セキュリティ、管理性を備えた環境の整備が企業にとって急務になっている
この方向性に基づきリリースした製品の一例が、ギガアクセスVPNルーター「RTX1220」だ。これは中小規模拠点向け製品である「RTX1210」の姉妹機種。高い安定性など、性能や機能は同等だが、ISDN接続機能を省いて一層の低価格を実現した。リモートワーク需要の増加に対し、より広範かつ迅速に応えていく狙いだ。
セキュリティ要件に対しては、UTM製品「UTX200」をリリース。働く場所が多様化する中小規模の顧客やオフィスに対し、必要なセキュリティ機能を1台で提供する。
「さらに管理性の要件を満たすものとしては、かねて提供してきたクラウド型ネットワーク統合管理サービス『Yamaha Network Organizer』(以下、YNO)があります。YNOにより、多数のネットワーク機器の稼働状況を一元的に可視化できます。遠隔からの管理が可能になるため、ネットワーク管理者の感染対策強化にも効果を発揮するでしょう」と川上氏は語る。
今後もヤマハは、顧客やパートナーの声に耳を傾けながら、困り事の解決につながる製品の提供、および情報の発信に取り組んでいく。「私たちはこれまでも、お客様やパートナー様の課題に向き合うことを重視してきました。大きな環境の変化に見舞われたこの1年で、その重要性は一層高まったと感じます。」と川上氏は言う。ニューノーマル時代、企業ネットワークの進化を支えるヤマハは、顧客そしてパートナーにとって欠かせない存在であり続けるだろう。
「日経コンピュータ パートナー満足度調査 2021」ネットワーク機器部門において3年連続で第1位を獲得
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