地域に密着した報道で多くの県民から支持される新潟日報社。ここでは、新聞制作の新システム導入に伴い、ネットワークを着々と強化しつつある。広帯域・低コストのフレッツ網を活用するとともに、ヤマハルーター「RTXシリーズ」を本社及び県内29拠点に導入している。具体的には、ベストエフォート回線でも安定的な通信が行えるヤマハ独自の「QoS連携機能」を活用。高効率かつ災害時にも対応可能なデータ・内線電話(VoIP)の統合ネットワークを構築している。
新潟日報社は、50万部の発行部数を誇る新聞社。確かな報道で「新潟の今」を伝え、県内普及率61%を超えるなど多くの県民から支持されている。その紙面づくりの原動力となっているのが、地域に密着した取材網と最新の情報技術だ。新潟市内の本社と県内各地の支社・支局・記者クラブをネットワークで結び、読者にタイムリーなニュースを届けている。
さらに同社では、これまで以上にスピーディで信頼性の高い紙面づくりを目指し、各種システムの刷新を図っている。記事や写真など原稿の集配信を行う「素材管理システム」もその1つ。これは、支社・支局の記者から送信される取材メモを基に、記者と本社の編集デスクが掲載する記事を検討したり、従来FAXを使っていた印刷前の記事内容の確認を、PDFファイルへと電子化し、PC上で行えるようにするシステムだ。
「この素材管理システムの実現には、各拠点の記者が本社と双方向で安全にデータをやり取りできる広帯域ネットワークの構築が欠かせません。また、災害時のシステム運用や内線通話の確保など、WANの機能強化も求められていました」と新潟日報社システム部長佐藤寛氏は述べる。
従来同社では、支社・中規模支局にATM専用サービス、小規模支局にISDN、記者クラブにフレッツ・オフィスを導入しWANを構築していたが、狭帯域の拠点では、大容量のPDFデータの利用や双方向通信に支障をきたす懸念があった。また、中越大地震の際、停電でデータ通信が困難になった経験などを踏まえ「各拠点で新システムを快適に利用できるようデータ通信網の高速・広帯域化や、音声通信を含めた通信コストの削減、新聞の発行に欠かせない通信ラインの確保などを目標に、新たなWAN構築に着手したのです」と、新潟日報社システム部主任の高野郁雄氏は話す。
システム室 システム部部長
佐藤 寛氏
システム室 システム部主任
高野郁雄氏
システム室 システム部
川上智靖氏
新潟日報社のWAN構築をサポートしてきたNTT東日本新潟支店では、こうした目標を達成するため、広帯域・低コストのフレッツの活用を提案した。具体的には、インターネットから隔離された高セキュリティの「フレッツ・アクセスポート」を用い、本社と各拠点をフレッツ回線で接続するとともに、既存のデータ回線をバックアップに利用する構成だ(図)。特にWANの要となるVPNルーターにはヤマハの「RTXシリーズ」を採用している(回線のバックアップとして既存メガデータネッツ網やISDN網を使用し、メイン回線障害時に自動でバックアップ回線へ切替)。その理由をNTT東日本‐新潟SE担当の長谷川茂氏は次のように話す。
「高速なデータ通信と内線電話を統合するWANには、信頼性の高いルーターが重要なポイントとなります。その点、RTXシリーズは、大規模向けから小規模向けまで製品ラインアップが充実しており、ヤマハ1社であらゆるニーズに対応できます。また、『QoS連携機能』を活用することで、内線電話の通信品質を高められると判断しました」
QoS連携機能とは、ベストエフォート回線を利用したネットワークでより確実な通信を可能にするヤマハ独自の機能で「RTX3000」「RTX1500」「RTX1100」を組み合わせて利用する。帯域検出機能を用い、センター側のRTX3000と拠点側のRTX1500、RTX1100の実行帯域を定期的に測定し、QoS連携機能を適用することでパケット送信速度を帯域の変動に合わせ、パケットロスを抑える仕組みだ。
新潟日報社では、本社をはじめ、各拠点ではBフレッツの導入を原則としているが、提供エリアの関係からフレッツ・ADSLを導入する拠点もある。フレッツ・ADSLの上り(最大5Mbps)にQoS連携機能を利用すれば、安定したデータ通信と音声通信が実現する。
「WAN構築に先立ち、新潟支店内でQoS連携機能の検証を行っています。ベストエフォート回線でもQoS制御を行うことで音声品質を改善できる検証結果が得られています」とNTT東日本‐新潟SE担当の佐野博氏は述べる。また、検証段階からWAN構築に参画している新潟日報社システム部の川上智靖氏も「一般電話網の使用感に近く、違和感なくVoIPの内線通話が行えます」と評価する。
法人営業部SE部門
第一SE担当
長谷川 茂氏
法人営業部SE部門
第一SE担当
佐野 博氏
2006年10月から、RTXシリーズとフレッツ・アクセスポートを組み合わせた広帯域のWANが稼働している。その導入効果の検証・評価は、素材管理システムが本格稼働を開始する2007年1月以降となるが、スムーズな紙面づくりや通信コストの削減のみならず、災害時にも新聞発行を継続できる体制が整ったといえるだろう。
「中越大地震のような災害時における号外の発行など、迅速かつ正確なニュースを届けることが新聞の使命。その意味で今回のネットワーク再構築の意義は大きいと思います。今回、データ通信と内線電話を統合し、回線のバックアップを実施しているのも、平常時の高速通信のみならず、災害時の報道に備えるためでもあるのです」と佐藤氏は語る。
また、現在、情報保護の観点から記者のPCは、社内システム接続用とインターネット接続用で使い分けているが「セキュリティを保ちながら利便性を高めるためのネットワークの提案を今後もお願いしたいですね」と新潟日報社のシステム部の各氏はヤマハとNTT東日本に期待する。
ブロードバンド回線を活用しつつ、安定的なデータ通信と内線電話をいかに実現していくか――。統合WANを構築した新潟日報社の事例は、多くの企業にとっても注目に値する事例だといえるだろう。
変動する帯域で、より確実なQoS制御が可能
音声のインターネットプロトコルであるVoIPが使えるルーターを導入すれば、社内のIPネットワークを活用してインターネット/イントラネット電話網を簡単に構築することが可能です。
ネットワーク全体でQoS機能の有効性を高める仕組みを提供します。帯域が変動しやすいベストエフォート回線で確実なQoS制御を行います。センター側と拠点側の実効帯域を定期的に測定し、QoS機能を適用することでパケット送出速度を帯域の変動に合わせ、通信パケットの喪失を抑えることができます。
関連情報: 帯域検出機能の設定例 (技術情報:帯域検出機能より)
事業内容
発行部数50万部を超える「新潟日報」を中核に、県内外に張り巡らされた取材力を基に、放送、電光板、ホームページ、携帯電話などのさまざまなメディアを通じ、蓄積された膨大な情報資産を有効利用しながら「新潟の今」を伝えている。
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