——NVR500は基本設計からデザイン、生産までをすべてヤマハ内部でまかなっていると伺いました。あえて自社生産にこだわる理由や、その結果ユーザーが得られるメリットについて教えてください。
平野 1つひとつの部品設計にいたるまで自分たちで眼を配れるため、高い品質を維持できること。万が一トラブルが発生した場合も、的確かつ迅速な対応が可能なことが挙げられます。今回のNVR500から生産を中国に移しましたが、その工場もヤマハ100%子会社(※1)でヤマハの技術者立会いのもと生産を行っています。
牧田 もう1つ大事なのは、自社で作らないと技術が社内に残らないんですよ。部分的に外注するのはやむをえないとしても、コアになる技術は自分たちで手がけないと、社内のエンジニアに技術力やノウハウが蓄積されないし、後の世代に継承していくこともできません。技術力を維持し高めていく上でも、自社で作るというのはとても重要なのです。
——外部に全部出してしまえば、コスト的には楽だし効率もよいと思うのは、いささか早計にすぎるというわけでしょうか。
ブロードバンドVoIPルーター
(ISDN回線対応) RT57i (2003年)
牧田 たしかにそうやって価格を下げていくことも可能ですが、そうなると他メーカーとの差別化ができなくなる。つまりヤマハらしさ、ヤマハならではの技術や性能、メリットが失われてしまいます。大変でも自分たちで技術を蓄積していけば、それが “枯れた技術=熟成されたノウハウ”となって、次の新しい世代の技術や製品を生み出す力になっていきます。長期的には、自社で作るというのは大きな可能性を生むための底力につながっていくのです。
——OSも、ルーターではよく使われるLinuxをあえて選ばなかったと聞いていますが。
平野 一般に低価格のルーター製品は、Linuxを使用しているものが多いんです。しかしLinuxだと普及している分、脆弱性やアタック方法が知られているので、不正侵入などの懸念が高くなります。その点、ネットボランチシリーズは自社開発専用の組込用リアルタイムOSなので、不正アクセスなどの危険にさらされる可能性は、きわめて低いといえます。
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